ChatGPTで英文契約書を翻訳することのメリットデメリットとは?
ChatGPTで契約書を翻訳するメリット
海外の企業と契約を結ぶ際、全て英文で書かれている契約書を読み込むのは一苦労。そんな時、ChatGPTが活躍してくれます。ChatGPTで契約書を翻訳するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
手軽に翻訳作業ができる
ChatGPTは、プロンプトに的確に指示を記入することで簡単に翻訳ができます。
契約書そのものはかなりの文章量がありますが、「これは英文の契約書です、以下の文章を訳してください」などの指示を入れ、指示と文章を「##」や「””」などで区切ることで確実に翻訳してもらうことが可能。膨大なデータをもとに学習したAIが状況等に合わせて翻訳してくれます。
短時間で正確な翻訳することができるため、コストと時間を大幅に削減することが可能。また、リアルタイムで翻訳することができるため、契約先とスムーズにコミュニケーションが取れます。
多言語に対応している
ChatGPTは、日本語だけでなく英語やスペイン語、ドイツ語、フランス語など主要な言語に対応しています。
英文に関しては全く問題なく翻訳することができ、マイナーな言語にもある程度対応が可能。英文以外の言語を扱わなければならないときでも概要を掴むくらいの翻訳が期待できるため、さまざまな言語の契約書に対応できます。
指定したニュアンスに沿った内容で翻訳できる
ChatGPTは、プロンプトで指示を出せばニュアンスやアウトプットの形式を調整することができます。例えば、「フォーマルな感じ」「カジュアルな感じ」などを指示することで、それに合わせた文章の翻訳をしてくれます。
また、前述したとおり「これは契約書です」とプロンプトで伝えれば、ChatGPTのAIが契約書を意識した翻訳をすることが可能になります。
ChatGPTで翻訳を行うメリットは多々ありますが、主に挙げられるものは上記の内容です。
先方から送られてきた文章をそのままコピー&ペーストするだけで翻訳することができる手軽さや、膨大なデータを学習して進化しているといったメリットを踏まえると、このツールを活用するメリットは大きいと言えます。
ChatGPTで契約書を翻訳するリスク・デメリット
ChatGPTで契約書を翻訳するメリットは数多くありますが、当然のことながらリスクやデメリットもあります。
専門的な知識・用語が多い翻訳には向いていない
ChatGPTは、ネットワーク上や他のユーザーが打ち込んだプロンプトや文章などから学習して進化しています。そのため、契約書に書かれている内容やジャンルによってはChatGPTが理解しているレベルと差異が生じる可能性があります。
翻訳においては学習データの質や量によって精度が左右してしまうため、専門的な知識(法律、医学、工学など)が必要な場合には正確な翻訳ができていない可能性がありますが、ChatGPTはAIがわからないことも「正しいこと」のように翻訳して表示することがあります。
そのため、翻訳されたものの正確性がどれだけのものかは自分もしくは専門家の目で確認しなければなりません。
入力した内容が学習データとして他の利用者に表示される可能性がある
ChatGPTは、利用された時の情報や文章をデータとして学習しています。つまり、契約書を翻訳した場合、その内容はAIの学習内容になるということです。
学習機能をオフにすることもできますが、契約書の内容や個人情報などはサーバーに送信されることを理解した上で活用するようにしましょう。ChatGPTを活用する前に、セキュリティ対策を講じることが重要です。
文字数制限(トークン制限)がある
ChatGPTには、一度に入力できる文字数制限があります。基本的には4096トークンという制限がありますが、英語の場合は1単語が1トークンと換算されるため、日本語の場合は約2000文字程度になります。
文章量によっては分割しなければならなくなりますが、翻訳の返信が途中で途切れてしまった場合には「続けて」や「continue」と打つことで、そのまま翻訳を続けてくれます。
手間がかかる可能性がある
ChatGPTを活用した翻訳そのものは簡単にできますが、翻訳の精度は100%ではないため、内容に問題やニュアンスなどに問題はないかを最終的には人の目で確認しなければなりません。ChatGPTによる翻訳はあくまでも「仮」であるという認識を持ちましょう。
特に契約書の場合、内容の齟齬や理解に食い違いがあると手違いやトラブルが増える可能性も。専門的な内容の場合は専門家や翻訳家の目を通すようにしましょう。
ChatGPTは、世間的な評判や精度の高さから完璧だと思われがちです。しかし、あくまでも「翻訳の手助けをしてくれる」程度のものであること、最終的には人の目によって不足しているところを補い翻訳し直すこともあることを考慮して活用するようにしてください。
ChatGPTはGoogle翻訳・DeepLと翻訳制度に違いがある?
「ChatGPTの真骨頂は、翻訳機能にある」と言われることがあります。しかし、ChatGPTが生まれる前にはGoogle翻訳やDeepLが活用されていましたが、これらとChatGPTにはどのような違いがあるのでしょうか。
ChatGPTとは
ChatGPTは、OpenAI社が開発した高度なAI技術によって自然な会話ができるチャットサービスのこと。ユーザーが入力した質問に対して、他人とやり取りしているような自然な対話が楽しめるサービスとなっています。
ChatGPTは、大規模言語モデル(LLM)の一部です。LLMは、大量のテキストデータによってトレーニングされた自然言語処理(NLP)モデルであり、テキスト分類、感情分析、文章要約、質問応答、テキスト生成などのタスクを行うことができます。
ChatGPTのAIはインターネット上にあるデータやユーザーがChatGPTに打ち込んだ情報などを学習し続けており、複雑な語彙や表現も理解できるなど常に進化し続けている状態です。
Google翻訳との違い
Google翻訳もChatGPTも、どちらも自然言語処理モデルによるサービスです。これらの大きな違いは、「翻訳が直訳的なものかどうか」。ChatGPTの場合、プロンプトによる質問によって出された回答をそのまま活用することができますが、Google翻訳の場合は直訳的すぎるため自然な形にリライトする必要があります。ただし、Googleは自然言語処理(NLP)にかなりの投資をしているため、翻訳クオリティは一定以上であると言えます。
自分で和訳を確認できるのであればGoogle翻訳を、第三者の目に留まる場合にはChatGPTを使うといったように、それぞれの特徴に合わせて使い分けましょう。
DeepLとの違い
DeepLとは、2017年に発表されたドイツ生まれの機械翻訳エンジンのこと。翻訳精度はかなり高く、定期的にブラインドテストを行うことで常に精度を高め続けています。
DeepLよりもChatGPTのほうが比較的自然に近い翻訳ができ、どちらも高速な翻訳ができるがChatGPTのほうが比較的分かりやすいインターフェースであるという違いがあります。
DeepLは大量の文章を翻訳する必要がある場合に活用し、短い文章や初心者が翻訳をAIツールに依頼する場合にはChatGPTを使うと良いでしょう。
翻訳は全てChatGPTに任せても問題ない?
ChatGPTのクオリティの高さから、「全ての翻訳を任せても大丈夫だろう」と考える方もいるでしょう。しかし、使用するにあたっては注意しなければならない点が多くあります。
翻訳のプロに依頼する必要性はまだある
いくら膨大なデータを学習しているAIとはいえ、文脈の誤解があったり、文化的な背景や専門知識の不足など限界はあります。ChatGPTによって翻訳したものは、あくまでも「仮」である意識を持ちましょう。
最初から翻訳家に依頼するよりも時間やコストは抑えられるため、翻訳家やその道のプロには最終的なチェックのみを依頼すると良いでしょう。
生成した内容が著作権の問題につながる可能性がある
ChatGPTを活用するときの課題として挙がるのが、著作権問題です。
ChatGPTが学習するテキストは、他者の著作物や既に世の中に発行されているものがほとんど。そのため、意図せず著作権を侵害してしまうことがあります。
ChatGPTで生成した文章は必ず見直し、具体的な数字データを含む場合は出典を併記したりオリジナリティを加えたりするよう注意してください。
OpenAIが定める利用規約の遵守が必要
ChatGPTを利用する際は、OpenAIが定める利用規約を理解して遵守する必要がありますが、このOpenAIが定める利用規約では、利用者との利害関係について以下のように書かれています。(2023年8月調査時点)
- 利用者は入力内容や出力内容について、規約の範囲内であれば商用利用を含むあらゆる目的で利用することが可能である
- 利用者は、入力内容や出力内容について、適法性や規約等に反していないかについての確認を含めた責任を負う
- OpenAIは、入力内容や出力内容を利用することがある
つまり、ChatGPTの利用者は出力された内容を自由に活用できるが法的な確認や責任は自身が負うこととなっており、さらに内容はOpenAIに利用されることもある、ということ。
個人情報や機密情報もChatGPTの学習に利用される可能性があるため、特に機密情報を多く含む契約書などを翻訳するのはリスクを伴います。契約内容によっては利用を避けるのが賢明だといえるでしょう。
今回は、ChatGPTによって契約書を翻訳するときのメリットやデメリット、注意点や他の翻訳ツールとの違いを解説しました。
自社で翻訳AIツールを活用する時には、契約書の翻訳ミスによるトラブルを避けるのは当然のこと、ChatGPTを使うことによる法律に関わるトラブルなどを回避することも心がけましょう。