財務翻訳における注意点とは?
総まとめ・財務翻訳の注意点
財務文書を英文開示する1番のメリットは、英語圏の投資会社や株主、投資家向けて会社の財務状況を伝えられるという点でしょう。
企業の経営状態を数値的に示し、投資する価値を客観的な視点で評価してもらえます。
ただし、財務翻訳をするにはいくつかの注意点があります。
各開示文書や報告書の特徴を踏まえた上で、伝わりやすいように翻訳しなければなりません。
財務翻訳の注意点1. スタイル項目を決めておく
スタイルとは、翻訳するうえでの文章の見た目や形式、ルールなどを含みます。
翻訳した財務文書を見た際、読みにくいと感じられてしまっては内容を読んでもらえない可能性があります。
また、翻訳作業にはたくさんの人間が関わるため、読みやすく理解しやすい翻訳文書を書くうえでルールを先に決めておくことが重要です。
スタイルで決めておくべき点には以下のようなものがあります。
- 数値(1~10の数字表記、11以上はアラビア数字で翻訳するのが通常)
- 年度(略さずに年度を書くのか、省略するか決める)
- 日付(アメリカ英語、イギリス英語どちらを採用するか決める)
- ナンバリング(見出しの数字を統一させる)
- 会社名(当社The Companyと訳すか、会社名をそのまま訳すか決める)
- 勘定科目(EDINETタクソノミ用語集に合わせる)
- 通貨単位(円表記かドル表記か決める)
表示方法を最初に決めておけば、翻訳文書に一貫性が出て読み手の混乱を防げます。
財務翻訳の注意点2. 翻訳する文書ごとの注意点を知る
<法定開示文書>
法定開示文書には、有価証券報告書や事業報告書などが挙げられます。具体的には財務データを明らかにする損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書などがあります。
法定開示文書は、投資家に起こりうる不測の損害に備えて開示を義務付けられている文書のこと。
大元の文書を翻訳した後は、最新情報の追加や修正がメインになるでしょう。事前に表記ルールの統一や整合性を図っておくことが、文書内での齟齬を防ぐポイントです。
<決算短信>
投資家や取引先にすばやく会社の情報や発表、業績予想を開示したいときに使うのが決算短信です。
法律で開示を義務付けられているわけではありませんが、投資家に迅速にニュースを伝える目的で作成するなら、スピード感が求められます。
迅速に決算短信を発信するためには複数の翻訳者で作業をすることが多くなりますが、それぞれが独自のスタイルで翻訳すると、表記ゆれや誤訳が起きてしまう可能性が高まります。翻訳作業の開始前に翻訳ルールを決めておきましょう。
IR(投資家向け情報提供)の一環としてホームページで決算短信を発表することもあるため、慎重に翻訳しなければなりません。
<統合報告書>
統合報告書は、財務データだけでなく非財務データを統合し開示する文書です。
経営者の思想や企業理念、事業予測・分析などに加え、技術力の高さなどを積極的に投資家や取引先に伝えられます。
投資価値のある会社として評価してもらうには、英語圏の方の心を揺さぶり、魅力のある会社だと考えてもらえる英文を書く能力が求められます。
誤訳を無くすだけでなく、違和感がないかネイティブチェックする必要があるでしょう。
財務翻訳の注意点3. 秘密保持契約を結んでおく
法定開示文書や決算短信の翻訳を依頼するときは、情報漏洩に注意しましょう。
会社の経営状況や業績など、財務文書に書かれている内容は機密情報に該当します。
もし重要な情報が漏れてしまえば、取引の中止や株価暴落、営業機会を失うリスクもありえます。翻訳の依頼先と秘密保持契約を結んでおけば、損害やインサイダー取引を回避できるでしょう。
翻訳データは紙媒体に留まらず、インターネット上での翻訳作業をする機会も増えてきています。
翻訳データの扱い方やサーバーのセキュリティ面も確認しておくと、情報漏洩の防止に有効です。
財務翻訳の注意点4. 機械翻訳の限界を知っておく
近年、機械翻訳の精度は向上しており、導入することで人的リソースを少なくできます。
さらに、人が翻訳するよりも早く文書を翻訳可能です。
機械翻訳の際には、勘定科目や会計基準の仕訳、役職名、会社の名前などを設定する、もしくはコーパス(言語テキストの集合体)を増やす必要があります。
ただし、コーパスを増やしすぎると翻訳の基準が曖昧になる可能性もあるため注意しましょう。
機械翻訳は、文章が長くなるほど誤訳が増える傾向にあります。
「訳語の不足から単語が連続していないか」「数字はきちんと翻訳されているか」など、最終的に人の目で確認するのが現状です。
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